|
|
▼日本海海戦における三笠の無線電信機の損傷16
『軍艦三笠戦時日誌』における無電受信以外の記述(其の十二)
**********
[承前]
(十二)無線電信ノ作動
三、無線電信ニ付キ将来改ラルヲ要スヘキ点左ノ如シ(の続き)
(三)単檣艦ニアリテモ戦闘用ノ目的ヲ以テ引込口トシテ「マスト」内腔ヲ使用スルノ道ヲ講センコトヲ希望ス 抑モ無線電信効力上ヨリ云ヘハ二檣ノモノヨリ単檣ノモノヲ有利ナリトシ又防禦ノ点ヨリ云フモ第一項ニ述ヘシカ如ク勤メテ上甲板以上ノ副造物ヲ避ケサル可カラサルヲ以テ今後ノ軍艦艦形トシテ寧ロ単檣艦ヲ是トシ信号ノ副装置タル一檣ヲ廃スル代リニ其重量ヲ以テ一檣ヲ強固ニ構造センコト小官ノ希望ニ堪ヘサル所ナリ
(四)艦船ニ於ケル垂直線装備ノ進歩ト共ニ送信力ヲ弱ムヘキ「ステイ」「リギン」絶縁ヲ完全ニスルハ勿論其導キ方ニ於テモ垂直線ノ好状態ヲ保持セシムル為メ請求ハ勤メテ之ヲイ満足セシメラレンコトヲ希望ス
(この少し前の箇所で伊地知彦次郎艦長は、下図のようなアンテナの張り方と無電室の位置やそこまでの引き込み方法を提案しています。この図は活字化された本では略されており、戦時日誌の原典を見ないと見つかりません。これは当時としては経験を生かしてよく考えた方法だと思いますが、その後発展したアンテナの知識から言いますと、無理があります。線状アンテナというのは、マルコーニが始めた方法ですが、最初のうちはただ単に上空高く伸ばすだけでしたが、後には横に張ってその端や中央から下に降ろす方法がよく用いられるようになりました。そしてその性能がなかなか良い事が見出されました。これは日本海軍では横臥式垂直線と呼んでいましたが、おそらくは艦船の上という制限された形状に合わせて工夫されたものでしょう。この横臥式の特性が良好である理由として当時の人たちは――高度な専門家も含めて――横に張った線からたくさんの電波が出るからだと考えたようです。しかし大正時代以降に研究が進んで、昭和初期には明かになったのですが、線状アンテナの電波送受は、主に地表に垂直な部分でなされます。横臥した部分からの電波は地表や海面からの反射波と相殺してしまって、効率が悪いのです。直接波と反射波とでは極性が逆になるからです。なぜ逆かといいますと、それは地面や海面が導体で電波はそれに水平だからです。一方垂直部分からの放射は反射波と極性が同じで相加しますので、そういう事はありません。ではなぜ艦船での横臥法が良好だったかといいますと、垂直部分の先に横臥部分がある事によって垂直部分の電流が増えたからです。つまり下に降ろすための垂直部分からの電波が増えたのです。しかし当時の人たちは、木村駿吉のような開発者でも、その部分を単なる引き込み線としか考えていなかったようです。ですから下図のように、電流の多い大切な垂直部をマストの円筒の中に入れてしまう案を出しているのです。さて、この(三)と(四)の提案は、軍艦上でのマストがらみのワイヤーによる電波妨害にいかに悩んでいたかを物語っています。いまの知識であれこれ考えてみましても、前回の図の後部無電機のアンテナが最善でしょう。大砲の邪魔という点を除きますと。(三)の単檣が良い――は、二檣に比べてマスト間のワイヤーが無いため張りやすいと考えたためでしょう。(四)の「ステイ」や「リギン」の絶縁というのは、これらを絶縁すればアンテナへの電気的妨害が減るからで、木村駿吉もそれに気づいて上層部に提言したそうですが、そういったワイヤー類を碍子を使って絶縁すると、碍子の強度がまったく保たず、壊れてしまうので無理だと判断されたようです)
▼伊地知彦次郎艦長のアンテナ張り方と無電室位置の案
↓↓↓↓↓
|
|